[サウンド・ラボ] 山下達郎のサウンド『CIRCUS TOWN』
CIRCUS TOWNには、16ビート、チョッパー、シンコペーション、分数和音など当時の新しい音楽的な要素が散りばめられている。
山下達郎はシュガーベイブ解散後、1976年にソロシンガーとして活動をスタート。
アルバム『CIRCUS TOWN』(レーベル: RCA/RVC)は、シュガーベイブ解散後、山下達郎初のソロ・デビューアルバム(1976年発売)。
当時(1973年以降)、シュガーベイブが日本の音楽業界に受け入れられなかったことで挫折感を味わった達郎はこのアルバムでは、アメリカの音楽家にプロデュース、アレンジメントを委ねるという方法をとった。
1970年代、日本の音楽家が米国で録音した先駆けになるのではないだろうか。当時、最新のサウンドを創り出せるのは、ニューヨーク、ロサンゼルスだったのだ。
CD版「CIRCUS TOWN」の達郎自筆ライナーを読むと、初めての海外録音に緊張しながらも、彼の音楽に対する「美意識」とニューヨークでのサウンドイメージが同じであることがわかり安堵したという件が書かれている。
達郎の思い描いていたサウンドは、NYサイドのプロデュース、アレンジを担当したCHARLES CALELLO(チャーリー・カレロ)とプレイヤーが創り出す、それと一致したようだ。
CIRCUS TOWNの録音はニューヨークとロサンゼルスで行われた。その後発売されたLPレコードの盤面はNew York SideとLos Angeles Sideになっている。LPレコードの時代はA面、B面の楽曲を各々カテゴライズする方法がよく使われたのだ。
【参加ミュージシャン】
ニューヨーク録音の際のミュージシャンとして、フュージョンブームで脚光を浴びたWill Lee(ウィル・リー:24丁目バンド)、John Tropea(ジョン・トロペイ)、Jeff Mironov(ジェフ・ミロノフ)、Randy Brecker(ランディ・ブレッカー:ブレッカーブラザーズ)等の名前が載っている。筆者にとっては言わば、フュージョン祭りと言える。
【楽曲について】
本作では吉田美奈子が作詞を担当している。(WINDY LADY、MINNIEは山下達郎が作詞)。
楽曲には、16ビート、チョッパー奏法(現在のスラップ奏法)、シンコペーション、分数和音など当時の新しい音楽的な要素が散りばめられている。
2025年から50年ほど前になるが、ロック好きな高校生の自分にとってこれらのサウンドは、刺激とともに楽曲の難解さも感じていたのかもしれない。
【CIRCUS TOWN】
各楽曲について筆者の感じたままを書いてみた。
<New York Side>
CHARLES CALELLOによるプロデュース、アレンジ。
達郎の若さみなぎるボイスが眩しい。この作品での達郎のボーカルサウンドはイフェクト感をあまり感じず、ナチュラルなサウンドに聴こえる。音像としてはリズム隊、特にドラムスがセンターで全面に出てくる感じだ。
01.CIRCUS TOWN(サーカス・タウン)
ドラムスとギターから入るイントロ。ストリングスとピッコロの絡みが味わい深い。モータウン・サウンドがベース(基本)にあり! ウィル・リーのエレクトリック・ベースにはとても温かみがある。アラン・シュワルツバーグのドラムスとジミー・マーレンのパーカッションがシンクロし跳ね上がるリズム隊となり、心地よいのだ。
02.WINDY LADY(ウインディ・レイディ)
この曲調とコード進行が好きだ。AOR黄金時代のサウンドを思い出す。ウィル・リーのチョッパーベースがスパイスになっており、アラン・シュワルツバーグのドラムスとの絡みが素晴らしい。スネアドラムスの乾いた音とハイハットが印象的。
エレクトリック・ベースの流れで言えば、
1.E → Aのコード進行をベースに
2.サビG→F#→キメのA on Bが入る。
1のパートはブレイクビーツとしてループに使われていそうなグルーブだ。
ギターはジョン・トロペイとジェフ・ミロノフ。どちらの音か不明だが、イフェクターのミュートロンのようなフェイザーサウンドがグルーブに加味されている。この曲にホーンセクションは必要不可欠。達郎のコメントの通り、「長いフレーズを一息で吹き通す」ジョージ・ヤングのアルトサックスソロは圧巻。
03.MINNIE(ミニー)
ウィル・リーのベースとフルートから始まるイントロ。分数和音を使った上昇するコード進行(E → G on A → A on B)は明るさと心地よさを感じさせてくれる一方で、その後の下降するコード進行はバラード感が高まり、グッと心に突き刺さるのだ。その後ジャジーな展開へ
04.永遠に
分数和音を使ったコード展開と転調が浮遊感を醸し出す。器楽的な楽曲で歌唱はとても難しいと思う。意外性のあるコード進行とアレンジはバート・バカラックを連想する。
<Los Angeles Side>
JIMMY SEITER & JOHN SEITERによるプロデュース。
山下達郎とJERRY YESTER(Background Vocals)によるアレンジ。
05.LAST STEP(ラスト・ステップ)
後のアルバム、『ON THE STREET CORNER』の構想はこの曲から始まっているのではないだろうかと、勝手に思っている。
06.CITY WAY(シティ・ウェイ)
アコースティックピアノのフレーズが印象的。ギターのリフとソロがユニーク。達郎のパンチが効いた声が聴ける。コーラスアレンジは達郎によるものか。
07.迷い込んだ街と
シンコペーションが特徴的なラテン・フュージョンの要素に達郎のポップセンスがミックスされた楽曲。歌のメロディラインは難解だ。
08.夏の陽
LAのイメージを描いたこの曲は現地で達郎が書いたそうだ。シンプルなコード展開の曲中、当時の日本の音楽業界では珍しい、ファルセットが聴ける。4人のコーラスのアレンジはその後の達郎作品の「コーラス技法」(筆者が勝手に命名)のベースになるものだろうか。
参考文献:CIRCUS TOWN CD版(発売元:BMG JAPAN)自筆ライナー。
【余談】
2025年11月14日、タワーレコード渋谷店にて「達郎祭り」の様相。
達郎の曲が店のJBLから流れる中、店内を回るとCIRCUS TOWN以降のLPレコードがずらり店頭に並んでいた。
Tシャツ、タオルなどTATSUROグッズもあり!インバウンドの影響か、外国人がたくさん来店していた。10年前くらいは平日の昼間はガラガラだったが、状況が一変している。
※お詫び:下の画像右サイド、山下達郎の写真の目の部分が白く見えるのは、照明が反射しているためです。
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